超党派国会議員の呼びかけで院内集会開催 3.18院内集会報告

国会でのリニア新幹線計画の検証と、必要性について国民的議論を!

 リニア新幹線沿線住民ネットワークは、 阿部知子さん(民主)、小池 晃氏、穀田 恵二氏、辰巳孝太郎氏、田村智子氏、畑野君枝氏(以上共産)、福島みずほ氏(社民)、本村伸子氏(共産)、山本太郎氏 (生活の党と山本太郎と仲間たち)の9人の国会議員の呼びかけで、3月18日午前11時から参議院議員会館B107会議室で、院内集会『リニアと国の責任~ JR東海はリニアに持ちこたえられるか』を開催した。集会には沿線ネット加盟グループを中心に80人が参加した。

 初めにリニア・市民ネット東京、リニア新幹線を考える東京・神奈川連絡会、同相模原連絡会、リニア・市民ネット山梨、静岡の南アルプス・リニア市民ネット静岡から活動報告が行われた。共通していたのは、説明会でのJR東海の回答は丁寧でも正確でもないものばかりで、決して沿線住民の理解が得られていないということだった。

 この後、「リニアと国の責任」のテーマで、法政大学名誉教授・弁護士の五十嵐敬喜氏が、さらに「JR東海はリニアに持ちこたえられるか?」のタイトルで千葉商科大学客員教授の橋山禮治郎氏が講演を行った。(両氏の講演趣告は後記)。


国交省との質疑
~異議申し立てから3か月以上経つのに「いまだ審査中」、「JR東海は説明会で丁寧な説明に努めていると考える」と無責任な回答

 午後1時半から集会が行われた会議室で、国土交通省からリニア担当部局の職員を招き、沿線ネットがあらかじめ提出した3項目に対する回答を求めた。出席したのは国交省鉄道局車両工業企画室長で施設課の中谷誠志氏と、同局施設課の専門官水野寿洋氏の二人。質問と回答は以下の通り。

Q1.
昨年12月16日に提出したリニア工事計画の承認処分取り消しの現状について。
A
「現在、鉄道局で鋭意審査中であり、いつ結論が出るのか言えない。申立は受理し、申立人の適格を含め理由などについて国交省として審査している」。 <会場発言>
中間報告をすべきだし、何人の態勢でどのように審査しているかを明らかにすべきだ。裁決が出るまでは着工するのは見合わせるべきだ。
A
「皆さんの5千通の申し立てについては行政不服審査法に基づいて審査をしており、どのような審査か、いつ裁決出せるかは現状では言えない」。


Q2.
JR東海の説明は粗略で丁寧ではない。国交省はどのように考えているか。
A
「場所によっては4時間も説明している。JR東海は丁寧な説明に努めていると考える」。 <会場発言>
時間が長いからと言って、丁寧な説明をしているとは言えない。今の発言は撤回すべきだ。住民の参加を制限している会場も多かった。住民が納得しないから説明会の時間が長くなっているのだ。
A
「事業説明はJR東海の責任で行うものと考える。国交省としては住民の理解が得られるよう丁寧な説明をするよう求めている」

Q3.
3月2日、衆院予算委で藤田鉄道局長はJR東海に丁寧な説明をするよう指導して行くと答弁しているが、どのように指導しているのか。
A「説明会は今後も行なわれる。そこでも丁寧な説明が行われると思う。国交省の姿勢は変わらない。しっかり指導して行く」。 <会場発言>
誤った説明や曖昧で具体性の無い説明が多い。JR東海の柘植社長は「建設発生土の受け入れ候補地がみつかり、事業全体の排出残土量を上回った」(中日新聞)と発言したが、候補地があるということだけで、リニアの残土量をすべて受け入れることではない。誤った発言だ。
A
「記事をみていないので分からない」 <会場発言>
川崎と町田の境界にある川崎市片平の非常口工事で、残土を運ぶ工事車両の走行路について、町田の説明会でJR東海は「すべて川崎側を走行」と言い、川崎の説明会では「町田を走行する」とJ R東海は説明した。

A
「正確な説明をするように求めて行く」

講演要旨
国民的議論が決定的に不足~五十嵐・橋山両氏が強調

院内集会での五十嵐敬喜、橋山禮治郎両氏の講演の概要は以下の通り。両氏ともリニア新幹線計画について国会での審議や国民的議論が決定的に不足していると述べ、検証の場や国民の理解がないまま進めば将来に禍根を遺すと警告した。

五十嵐敬喜氏「リニアと国の責任」

 リニアという民間の鉄道事業を整備新幹線にするには特別立法が必要である。全幹法(全国新幹線鉄道整備法)は土地の強制収用ができることになっている。 これは国家権力そのものになる。それにしては国民的議論が圧倒的に不足している。文化、自然環境、住民生活など日本の国土の構造的変化をもたらすのがリニア新幹線だ。新聞メディアは社説で慎重論を書いているが、掘り下げが足らない。
 
 2011年5月、リニア計画を承認したのは民主党政権で、東日本大震災福島第一原発事故の対応に追われ、リニア計画に目を向けられなかった。見直すべきチャンスを失った。現内閣参与の藤井聡氏は国土強靭化構想の立案者だが、リニアにとって民主党が最大の問題だったと言っている。国会では、2011年5月7日に穀田恵二議員(共)がリニア計画の問題を質したが、民主党政権は殆んど答えられなかった。残念なことだった。リニアを取り巻く現状は大政翼賛会状態と言える。

ただ、自民党の中にはリニアの問題点を理解している議員がいる。党の政策立案の中心は政務調査会であり、皆さんも政調に働きかける必要がある。リニア計画については、国土交通省交通政策審議会中央新幹線小委員会で答申まで20回の審議が行われた。現状は御用学者の集まりになっているが、委員の任期は2年であり、構成メンバーを変えるアクションもありだ。

そして、リニア新幹線の是非を問う上で自治体への働きかけは重要だ。自治体にとってもリニアは負担になる。まだまだリニア新幹線について国民の認知度は圧倒的に低い。自治体への対応を含め、皆さんが国民的議論を起す力を発揮してほしい。


橋山禮治郎氏
「国民的議論を1年やれば、代替案が見えてくる」

 私は、リニア新幹線について国民的議論を1年でもやれば、自ずと代替案が見えてくると思う。また、リニア計画の欠陥や問題点について、国会は国交省JR東海を召喚して議論を尽くすべきと考える、リニア新幹線事業が公共事業なのか、それとも民活公営事業なのか明確ではない。つまり責任がどこにあるのかわからない。このまま実現するようなことがあれば日本は滅びる。ヨーロッパではリニアが高速鉄道網の整備に繋がらない、ネットワーク性が無いことから開発を断念した経緯がある。

 2013年秋、リニア新幹線の採算性についてJR東海の山田佳臣社長(当時)は「リニアができても絶対ペイしない」と明言した。当然だ。日本は少子高齢化が加速度で進行し、とくに仕事で鉄道を使う生産年齢人口が大幅に減少する。東海道新幹線は人口減や旅客減を考える必要が無かったから採算がとれた。社長自ら不採算と認めたものをなぜつくる必要があるのかを改めて明らかにさせるべきだ。

 リニアは災害時の物資輸送の手段として全く役に立たない。運転士はいないし貨物も運べない。東日本大震災で鉄道は被災地への物資輸送で大きな役割を担ったが、リニアにはそれが全く期待できない。安全対策も不備そのものだ。このままでは国が滅びる。そうならないように、国民的議論が必要だ。


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院内集会での川村晃生共同代表の挨拶
今日の院内集会開催にあたって、国会議員の皆さんに後押しをお願いしたところ、9 人の議員が呼びかけ人に賛同してくれた。計画承認後国会でリニアについて審議がほとんど行われてこなかった。リニアは私たちの問題であるばかりでなく、国会議員の皆さんの問題でもある。今後、多くの議員が私たちの活動に賛同し、リニアを国会の場で積極的に取り上げてくれるよう。

                (編集・文責 天野捷一) 2015.3.28