ストップ・リニア!訴訟第五回口頭弁論&1周年記念イベント報告   

                                          2017.6.23

5回目の口頭弁論
私たちは昨年5月、国交大臣のリニア工事認可の取り消しを求めて738人が原告となり、東京地裁にストップ・リニア!訴訟を起こしました。裁判では、リニア沿線各地で起きている、またこれから起こるであろう深刻な事態について原告の県陳述が続いています。(原告団チラシより)

これまで岐阜県山梨県の原告の皆さんが意見陳述をしてきました。
第五回口頭弁論では、リニア中央新幹線計画の中でも最も難関とされる、南アルプスのトンネル貫通、その西側の出口となる長野県の原告が意見を述べるということで、注目されるところです。

暑い日にもかかわらず、全国から200名弱の傍聴希望者が集まり、今回も抽選が行われました。傍聴席満席で、開廷しました。




《弁護士意見と長野県からの意見陳述》

金枝弁護士(長野県大町市)から環境影響調査のやり直しを求める意見がありました。続いて、長野県下伊那郡大鹿村の住民、同じく下伊那郡松川町の住民の意見陳述がありました。以下にそれぞれの意見概要をまとめました。詳細は原告団サイトに陳述内容もアップされますのでご覧くださるようお願いします。
ストップ・リニア!訴訟原告団リニア新幹線沿線住民ネットワーク
http://linearstop.wixsite.com/mysite

金枝弁護士意見
「環境影響評価を行なう対象」が不明確、不確定なのに、免許がなされた
調査・予測・評価を行うべき対象や項目などが欠落しているか、調査・予測・評価を行なったとは評価できないというべきもの。これを認可した国土交通大臣の認可は33条違反である。

JR東海が示している路線や非常口、保守基地、変電所、駅などの予定地は、地図上に「だいたいこの辺の予定」と線や丸印を書き込まれているだけで、住民に詳細の説明があったわけでもなく、

非常に広い範囲の環境に深刻な影響が及ぶのが明らかな、重大な環境の改変になるにもかかわらず、こんなアバウトな計画図だけで環境アセスが認可されたことは、環境影響評価法33条違反(*注1)。

しかも環境影響評価の対象にならない施設もあるという事実です。対象とならない以上、「住民の意見を踏まえる」ことはできません。

「また、中央新幹線の工事実施により発生する建設発生土は、長野県全体では約950万m3とされているものの、この発生土の置き場は県内については環境影響評価の時点で確保されておらず、当然評価されていません」。

他にも水環境への影響、大気汚染、騒音、振動、住環境、希少生物、景観などの点で、いずれもJR東海は住民の意見も知事等の意見も反映させていません。

大鹿村住民 谷口さん

(非常に暮らしに近いところで、強引な工事が始まっていることを、航空写真の画像とともに意見陳述)。

工事のための拡幅工事で1時間も待たされるところがあるが、車両台数を減らす対策として、JR東海は「農地に仮残土置き場を作る」と言っている。しかし、仮残土置き場が良いか、渋滞を我慢するか、どちらも住人は望んでいません。
調査もせず、意見も聞かない上に、「この水が抜けたら誰が損害を被るのですか」という発言をした。それだけでももう、自然環境保全に無知で環境を破壊することをなんとも思わない企業であることがわかります。

国土交通大臣の意見の中で明示した条件に対しても不誠実で、信頼できない。既に工事は始まりましたが、即刻中止し、あらゆるものの命の根源である希少になってしまった自然がまだ、傷が浅いうちに止まることを願います。

松川町住民 米山さん

昭和36年の「三六災害」と言われる大規模災害がありました。
(資料;崖崩れと山津波、河川の氾濫を示した地図)

豊丘村には天竜川に注ぐ支流の源流域に発生土を置く計画がありますが、JR東海の検証について、「日本科学者会議長野県支部」が「3次元モデルで検証すべき」と指摘をしました。未だJR東海は旧式な2次元モデルでしか検証していません。発生土置き場計画は無効とされています。

松川町では3箇所の発生土置き場が候補地になっているが、「三六災害」で松川町も甚大な被害を受けており、人為的に山を削ることに反対、確定はありません。

また、JR東海は途中でいくつかの計画変更をしましたが、それは環境影響評価をしていません。ガイドウェイの組立用地を住民に知らせずに優良農地に計画したことなども、住民は騙された気持ちです。

JR東海はせいぜい数十年程度のスパンでしか見ておらず、南アルプスを始め、貴重な自然に回復不可能な損害を与えるもので、住民の暮らしを考えていません。自然に対する謙虚な姿勢を忘れず、数百年単位で考えるべきではないか。国は破壊に手を貸す認可はすべきではなく、裁判所の正しい判断が下されることを求めます。

最後に
再び金枝弁護士から「意見が違うものが合意するプロセスが民主主義ではないか」と問いかけました。

JR東海はこれまでどの地域でも、住民の質問に明確に応えることなく、先延ばしの対応をした上で、一方的に「住民のご理解を得た」として計画を前に進めてきました。その結果、このように環境アセスメント一つとってみても、法律を軽視し、逸脱し、違反したものだったということに、改めて憤りを感じています。


ストップ・リニア!訴訟1周年記念シンポジウム
絶対にリニア新幹線はつくらせない!

             2017.6.23
                ストップ・リニア!訴訟原告団
提訴から1年を記念して、リニアの不要性と危険性を改めて考える

《概要》特に重要と感じたところだけメモしたものです。詳細についてはやはり原告団サイトに追って報告が上がると思います。また、全容についてはUPLANの動画を是非ご覧ください。https://www.youtube.com/watch?v=p8jh7N4Cm6o

          基調講演 「暴走するリニア新幹線
                          ジャーナリスト斎藤貴男

帝国主義的」日本会議的な利権政治
少子高齢化を踏まえ「インフラシステム輸出」を進めていく。
社会資本、コンサルから施工、資材供給やメンテナンスまで、オールジャパンで一環提供する考え方で(パッケージインフラという名称で民主党政権が始めたもの)、資源収益、軍隊で守る、という考え方につながる→集団的自衛権の行使容認と改憲の流れにリンクしている。

 リニアと原発
電力をリニアは新幹線の40倍使うとされ、当然浜岡原発再稼働が視野に入っていて、政府自ら大阪までの延伸計画の前倒しをした。一方東京・甲府間だけでも東京オリンピックに間に合わせたいという声がある。
オリンピックとは何かといえば、外人の要人を招いての接待とセールスであって、リニア輸出と原発輸出がアベノミクスの正体と言える。

リニアと原発を世界へ売り込むための、日本はショールームではないか?
政治家はセールスマンではないか?!

「新しい帝国主義時代へ」で本当に良いのか
監視・マイナンバー・改憲・インフラ輸出・・・新帝国主義宣言と言える。
99%が1%に奉仕する社会になる。

リニアの問題を考えながら、一人ひとりの「生き方」の問題として捉えていこう。


        パネルディスカッション 
              「真実を隠してリニアを進める闇に迫る」


斎藤貴男氏  ジャーナリスト

関島保雄氏  訴訟弁護団共同代表

川村晃生氏  訴訟原告団長(コーディネイター



無責任⇄受忍
福島第一原発事故後の経過を見ると「無責任」という一語に尽きる。
そこには同時に「受忍」がある。
オリンピックは昭和の「夢をもう一度」=ただのナショナリズムに過ぎないものに、過大な計画を立てて「犠牲は受忍せよ」ということだ。

「発生土」の問題はアキレス腱
住民の反対で候補地を一つひとつ潰す。掘らせないこと!頑張れ!!
残土含めたアセスが必要=アセスやり直しを求める。
アセスの本来的要件=情報収集・住民意見を満たしていない。


《フロアより》
環境裁判
諸外国ではきちんと意見が言える。
環境影響評価の不備の詳細、「中身」に入らせる。

辻村千尋
・生物地理空間移動 (例;土砂の他県への移動)は
国際自然保護連合(IUCN)決議によりできなくなっている。
・種の保存、絶滅危惧種の指定をするよう環境省に働きかける。研究者の判断で、生息地などの保全をさせることができる。
<資料参照>

JR労組の方
コストカット、人員削減が進み、安全問題が浮上してきている。
リニアは外界と断絶した空間になり、地上でさえ緊急時の安全な輸送ができなかった。地下では一層難しいだろう。

リニア市民ネット東京
懸樋哲夫氏


注1;環境影響評価法 第33条
(免許等に係る環境の保全の配慮についての審査等)
第三十三条  対象事業に係る免許等を行う者は、当該免許等の審査に際し、評価書の記載事項及び第二十四条の書面に基づいて、当該対象事業につき、環境の保全についての適正な配慮がなされるものであるかどうかを審査しなければならない。
2  前項の場合においては、次の各号に掲げる当該免許等(次項に規定するものを除く。)の区分に応じ、当該各号に定めるところによる。
一  一定の基準に該当している場合には免許等を行うものとする旨の法律の規定であって政令で定めるものに係る免許等 当該免許等を行う者は、当該免許等に係る当該規定にかかわらず、当該規定に定める当該基準に関する審査と前項の規定による環境の保全に関する審査の結果を併せて判断するものとし、当該基準に該当している場合であっても、当該判断に基づき、当該免許等を拒否する処分を行い、又は当該免許等に必要な条件を付することができるものとする。
二  一定の基準に該当している場合には免許等を行わないものとする旨の法律の規定であって政令で定めるものに係る免許等 当該免許等を行う者は、当該免許等に係る当該規定にかかわらず、当該規定に定める当該基準に該当している場合のほか、対象事業の実施による利益に関する審査と前項の規定による環境の保全に関する審査の結果を併せて判断するものとし、当該判断に基づき、当該免許等を拒否する処分を行い、又は当該免許等に必要な条件を付することができるものとする。
三  免許等を行い又は行わない基準を法律の規定で定めていない免許等(当該免許等に係る法律の規定で政令で定めるものに係るものに限る。) 当該免許等を行う者は、対象事業の実施による利益に関する審査と前項の規定による環境の保全に関する審査の結果を併せて判断するものとし、当該判断に基づき、当該免許等を拒否する処分を行い、又は当該免許等に必要な条件を付することができるものとする。
3  対象事業に係る免許等であって対象事業の実施において環境の保全についての適正な配慮がなされるものでなければ当該免許等を行わないものとする旨の法律の規定があるものを行う者は、評価書の記載事項及び第二十四条の書面に基づいて、当該法律の規定による環境の保全に関する審査を行うものとする。
4  前各項の規定は、第二条第二項第二号ホに該当する対象事業に係る免許、特許、許可、認可、承認又は同意(同号ホに規定するものに限る。)について準用する。


<資料追記>
                   辻村さんからアドバイスをいただきました。

辻村です。まず確認しておきたいのは、iucnの世界自然保護会議の決議に法的拘束力は無いということです。一方、世界的な見地で、島嶼間及び異なる生物地理空間の間での土砂の移動が外来種問題の大きな課題であると認識され、その行為を行うときには特に配慮(対策)が必要であると認識されたということになります。ですので、法的拘束力はないものの、何の対策もせず土砂の移動をする行為が国際的に恥ずべき行為であることを行政に認識させるためのツールといて使ってもらいたいとの思いから発言しました。

今だとヒアリの問題等もあるので、土砂の移動が外来種問題を引き起こすことの実例を実感しやすいと思います。http://www.nacsj.or.jp/archive/wp-content/uploads/2016/08/IUCNmotion201708j.pdf …


決議そのものは上記URLをご覧ください。その前提の中に異なる生物地理空間の話が書かれています。決議は一見、辺野古の話なのですが、辺野古はあくまで現実に起きている事例として描かれています。

7月10日