7.18リニア講演会(相模原)報告②

原発とリニア シンポジウム報告―2
 
 7月18日に神奈川県相模原にて開催された緊急シンポジウム「どうする原発! どうするリニア!」では、235名の参加者があり、「リニア中央新幹線計画の見直しを求める集会宣言」(案)及び「浜岡原発の全炉廃炉及び使用済み核燃料の安全管理に対する要請」(案)が採択されました。
 これらはシンポジウム終了後、JR東海中部電力及び国土交通省経済産業省へ送付しています。

リニア中央新幹線計画の見直しを求める集会宣言
  ―福島原発の事故に際して緊急に宣言するー
 

 本年3月11日に発生した東日本大震災は、未曾有の惨禍を招き、多くの尊い命が奪われました。また、4ヶ月が経った今もなお、多くの被災者が数々の問題を抱えながらの生活を余儀なくされています。とりわけ福島第一原発の事故は、現在のみならず、遠い将来にわたって多くの苦痛を人々に与え続けるでしょう。原発安全神話は脆くも崩れ、まさにそれが神話であったことを、私たち国民は辛い現実と共に、思い知らされました。

 福島原発の事故が収束には程遠く、今夏の電力消費について、国民に省エネへの協力が呼びかけられている最中に、国土交通省中央新幹線小委員会の答申は出されました。そこでは、リニアのエネルギー源に関して、議論された形跡が全くありません。にもかかわらず、国土交通大臣は、時を経ずしてJR東海に対し、リニア中央新幹線の建設を指示しました。

 JR東海が計画しているリニア中央新幹線は、東海道新幹線の3倍といわれるエネルギーを必要とします。それは原発数基分に匹敵するエネルギーの量となります。すでに柏崎は大地震に襲われ、浜岡も、東海大地震が今後30年間に起こる確率が87%という高い確率であり、その日が刻々と近づいていると指摘されています。福島原発の惨状を見るにつけ、脱原発依存再生可能エネルギーへの転換を急ぎ進めていかなければなりません。このような現状の中、多大なエネルギーを必要とするリニア中央新幹線計画は、抜本的に見直すべきだと考えます。

 また、リニア中央新幹線は、全国新幹線鉄道整備法に基づいているとはいえ、民間プロジェクトです。その民間プロジェクトに、自治体が駅建設費の負担という形で、市民の税金が使われるならば、自治体が負担しなければならない合理的な理由と費用対効果について、十分な説明がされた上で、市民の合意が求められなければなりません。国においては、その関り方や責任について明らかにすべきです。

 私たち緊急シンポジウム「どうする原発!どうするリニア!」参加者一同は、JR東海と国、沿線自治体に対し、今後実施する調査などについて、積極的な情報公開を求めるとともに、拙速にリニア建設を進めることなく、真摯に課題解決に取り組み、未来の地球と子どもたちに責任の持てる結論を導き行動するよう、要請します。

 以上、集会宣言とします。     
                                  
 2011年7月18日 緊急シンポジウム「どうする原発!どうするリニア!」参加者一同

中部電力株式会社社長  水野明久 様
 浜岡原発の全炉廃炉及び使用済み核燃料の安全管理に対する要請

 
 本年3月11日、三陸沖を震源とする大地震と大津波が発生しました。この大津波は、多くの家屋や大型漁船までもを押し流し、河川を逆流し、場所によっては30メートルを超える高さまで達しました。チリ沖大地震の大津波を教訓として建設された防潮堤も破壊されました。そして、福島第一原発の爆発事故が発生し、大気中や海中には大量の放射性物質が放出されました。事故の対処については、現在に至るまで収束の目処さえ立っていません。

 中日新聞(7月1日付)によると、福島第一原発で4月から働く作業員4,325人中、3人に1人にあたる1,295人が連絡が取れないため被ばく検査を受けていないと報じました。中には、所在や氏名さえも不明といいます。

 原発事故は、周辺住民の土地、仕事、生活を奪うことだけではなく、多くの労働者を命の危険にさらしているのです。さらに、農業、漁業への影響ははかり知れません。福島から遠く離れた静岡県でも、茶葉から放射性物質が検出されています。

 福島第一原発事故を契機に、ドイツ、イタリアでは国家の意思として脱原発が決定されました。当該国である日本は、地震大国で最も危険な場所に原発が建設されており、本来なら先手を切って脱原発を表明しなければなりません。日本世論調査会が6月11、12日に実施した全国世論調査では、82%の国民が脱原発を望んでいることが分かりました。

 浜岡原発は、菅首相の要請を受けて運転を中止しました。しかし、津波対策として建設する防波壁が完成すれば運転を再開するとしています。この防波壁が津波対策に効果があるとは思えません。なぜなら、防潮堤と比較すれば防波壁は単なる薄っぺらな板だからです。また、福島原発津波ではなく、地震そのものによって配管等が破壊され機能停止になったとする識者もいます。いずれにしても1854年の安政東海地震を教訓とし、東海地震に備えるならば、浜岡に原発を建設してはならなかったのです。浜岡原発が爆発事故を起こせば、東京にも住むことが出来ないというシミュレーションが発表されています。そうなってからでは取り返しがつきません。浜岡は「第二の福島」と、多くの学者・知識人が警鐘乱打しています。

 中部電力は、以上の内容に真摯に耳を傾け、直ちに浜岡原発全炉を廃炉すべきです。また、現在保管されている使用済み核燃料の安全管理についても、大地震・大津波を前提とした対策を取るべきです。

 私たち、緊急シンポジウム「どうする原発!どうするリニア!」参加者一同は、本日開催したシンポジウムで、浜岡原発の全炉廃炉及び使用済み核燃料の安全管理を中部電力に要請することを全体で確認しました。

 以上、要請します。

 2011年7月18日 緊急シンポジウム「どうする原発!どうするリニア!」参加者一同