大鹿村議会 意見書提出

<報道>大鹿村リニア意見書 JRは重く受け止めよ

http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20161005/KT161004ETI090007000.php
信濃毎日_社説) 

住民の意思として、JRは重く受け止める必要がある。

 下伊那郡大鹿村の議会が、村内で掘削される予定のリニア中央新幹線南アルプストンネル・長野工区(約8・4キロ)について、JR東海に提出した8項目の意見書である。

 重要視したのは「住民理解」の考え方だ。JRは工事に本格着手する前提として「住民理解」が必要としつつ、理解を得たかどうかはJRが判断するという考えを示してきた。意見書はこれに対し、村議会と村長が同意を表明した後に工事に着手するよう求めた。

 村民には工事に対する不安が根強い。村議会として当然の判断を示した意見書といえる。

 トンネルから排出される約300万立方メートルの残土処分地が決まっていない。工事用車両が村と隣町を結ぶ県道を最大1日1350台走る影響は―。JRが先月開いた説明会では、住民から工事に対する不安や疑問が続出した。

 それなのにJRは説明会後、「理解が進んだと考えている」と述べた。このままでは住民説明会の開催を理由に、JRが「住民理解を得た」と判断して着工するのではないか―。住民からそんな不信感が漏れている。

 工事を理解し納得できるのか判断するのは住民だ。JRは意見書を尊重し、少なくとも村長と村議会の同意が得られるまで着工は避けるべきだ。

 村長と村議会の責任も重い。住民と向き合って要望をJRに伝え、住民が対応に納得したのか見極めることが大切だ。同意には慎重な判断が求められる。

 不安は大鹿村だけではない。県が主導して3日に開いたJR東海幹部と関係市町村長の意見交換会では、首長から「住民の不安にJRが十分応えていない」などと厳しい意見が相次いだ。

 JRは2015年4月に県と交わした基本合意書で「地域との連携を重視し(工事を)進める」と明記した。基本を守っているのか、改めて自問してほしい。

 県の役割も大きい。市町村が個別にJRに対応するのには限界がある。関係自治体の要望をJRに伝え、改善を求める役割も積極的に担っていくべきだ。

 意見交換会は今回が初開催で、県は継続的に開催していく考えを示している。3日は冒頭を除いて非公開になった。これでは住民が首長の意見やJRの説明を直接聞くことができない。住民の不安を解消するため、今後は公開で実施してもらいたい。

(10月5日)