【JR東海の学校へのリニア出張授業】  

今月初旬、リニア・市民ネット山梨(川村晃生代表)では、山梨県内のリニア通過地区市町村教育委員会に対して、JR東海による学校関係へのリニア関連知識「出張授業」がリニアの利点のみを一方的に流布させるものとして、公正な授業を行うという観点からどう考えるかなどについての申し入れを行った。これは、すでに問題となっている山梨県下の学校に対してマンガでリニアの利点ばかりを強調したパンフレットが配布(監査請求済)されたことから、出張授業も同じような偏向があるのではないか?というもの。これについて各教育委員会に申し入れたものである。通過市町村の教育委員会は、上野原教育委員会(以下省略)、大月市都留市笛吹市甲府市富士川町早川町。        申し入れ書全文は次の通り。                                

*** JR東海「リニア・鉄道館」の「出張授業」についての申入れ ***
日頃は教育行政にご尽力いただき、ありがとうございます。  さて、JR東海のホームページに、「リニア・鉄道館」の「出張授業」という<案内>が掲げられ、「じしゃくのふしぎをしらべよう、じしゃくが社会をかえる!超電導リニアのしくみ」というタイトルで、リニアの超電導技術の基礎知識についての授業を無料で行うという広報活動が展開されています。  私たちはこの広報活動に強い疑念を抱いております。言うまでもなく、JR東海は沿線各地でリニア新幹線の工事に着手しており、同社はリニアを次の時代の交通機関として最も重視し、併せて、同社の命運を左右する極めて重要な技術と考えています。それを学校に出向いて無料で説明する以上、その授業では巧言が弄され、真実が包み隠されることが懸念されてなりません。一つの問題は、おそらくリニア技術の優秀性や利便性ばかりが強調され、負の部分についてはまったく触れられないと考えられることです。

 JR東海超電導リニアは、技術上の問題点から言えば、エネルギーの過剰な浪費(在来の新幹線の3〜4倍以上)や、極めて高い電磁波(日常の生活環境の3千倍程度)の発生による健康への影響、またリニアを安全に運行させるためのメンテナンスの困難性などがありますが、JR東海はそれについては不問に付し、リニア技術の不思議さやすばらしさだけをとりあげて子供たちに説明するものと思われます。その点では教育基本法や学校教育法に示される「教育の目標」の趣旨と相容れないものと言えるでしょう。そして、こうした説明では、子供たちがリニアの技術について、優秀性や利便性という一方に偏った知識だけを教えられることによって、リニアが未来の夢の乗り物として素晴らしいものであるかのように思い込んでしまうおそれがあります。リニアの技術そのものについて学ぶことは何ら非難すべきことではありませんが、その場合、先に指摘した負の側面も併せて教えることが必要で、そのためには第三者的立場から客観的に説明できる研究者などの指導を仰ぐべきだと考えます。  

さらにもう一つ、一層深刻な問題を指摘せざるを得ません。先に述べたとおり、リニア技術によって運行される中央新幹線は、JR東海の将来と命運を担う交通機関です。従ってリニアは、JR東海の今後の経営に関わる最も重要な営利的事業と言って間違いがありません。そうした営利を目的とした事業に関する広報活動が、JR東海にとって都合のよい内容で教育現場に持ち込まれることには、やはり大きな問題があると言わざるを得ません。  私たちはこの広報活動が一民間企業の営利的活動であると認識しています。教育が私企業の広報活動や営利活動と繋がって良いはずがないことは指摘するまでもありません。これは教育上の、或いは行政上の大きな過失として指弾されねばならないと考えます。  以上の点において、今般のJR東海の「出張授業」という事案は、公的教育を根底から問い、それを揺るがしかねない重大な問題であり、従って貴委員会におかれては、慎重に熟慮のうえ対処していただくよう申し入れる次第です。 以上、ご検討をお願いします。                                           以 上