「ストップ・リニア!訴訟」山梨スタート集会のご報告

11/15(日曜日) 13時30分〜16時30分
山梨県中央市 玉穂生涯学習館にて
出席者約70名
講演の要約者 「ストップ・リニア!訴訟」
                山梨事務局 森本 優
○講演「市民運動と訴訟」川村晃生さん(リニア・市民ネット山梨 代表)
 市民運動について考えると、ヨーロッパのように、自ら血を流して勝ち取って
きた民主主義・基本的人権ではなく、大部分の国民にとっては与えられた民主主
義・基本的人権に胡坐をかいていることが今日の市民運動の停滞状況を生み出し
ているのではないか。
 また、情報公開が進まず、更に運動に必要な資金が無いのもその一因。
 今、経済的利益のみが最優先され、何が本当の豊かさなのか、本当の幸せとは
何か、といった根本的な問いを覆い隠し、リニアという大規模な公共工事※をい
とも簡単に認めてしまった国。その国に対して、去年の12月、行政不服審査法
基づき異議を申し立て、今回、事業認定の取り消しを求め行政事件訴訟を起こす
ことにした。
 確かに、「裁量権の範囲を越え、またはその濫用があった場合」(行政事件訴
訟法第30条)を立証することができるか、その困難性は当然自覚されるべき。
 しかし、司法の場で、リニアに関して社会的アピールの場を確保し、また、重
要な情報を開示させ、国民の関心を向けさせることが必要。そうすることで、市
民運動・住民運動を活性化させる必要が今あるのではないか。
 与えられた民主主義・基本的人権がいつの間にか奪い去られようとしている今
こそ※、その民主主義・基本的人権を自らのものとして血を流して勝ち取ってゆ
く必要があるのではないか。
 もし、今回、裁判闘争で自足してしまい、広範囲な市民運動住民運動につな
がってゆかない場合には、日本に民主主義が根付くことは当分ないのではない
か。そのことを充分自覚して、この訴訟を成功させたい。
 
※今の政府にとっては、原発の再稼動・輸出、辺野古基地の建設、軍事用機器の
生産・輸出、等々も、「公共工事」としての位置づけ。(森本註)
※秘密法・戦争法や改悪憲法・緊急事態法などがその道具。(森本註)
○講演「ストップ・リニア訴訟の課題」関島保雄さん(弁護士)
 訴訟を有意義なものとするには、世論を高め裁判所を動かす必要がある。その
為には、弁護士にお任せではなく、運動を盛り上げ、住民・市民・国民・自治
等を啓発し、意識・行動を変えさせるよう働きかけてゆくことが求められる。
 国土交通大臣の認可を取り消そうとする裁判で※、裁量権を逸脱した違法性を
認定してもらうため、全国新幹線鉄道整備法違反、環境影響評価法違反との二
点からその違法性を問う。
 この中には様々な問題点が内包する。
 特に、アセスの手続きと内容が杜撰であり、住民説明会のあり方に関して、質
問や時間が厳しく制限されたりして、決して参加住民の納得を得られるようなも
のではなかった。
 また民主主義の観点から言えば、広範囲に渡る自然破壊、沿線住民に対する人
権侵害、利用者の健康被害JR東海経営破綻の場合の国民負担、等々、多くの
問題を惹き起こすことが確実視されているのに、国民的な議論など一切無く、国
会でもほとんど取り上げられることが無いまま、ただ杜撰な交通審議会の審議の
みで、国策であるべき公共交通の建設・運営を一民間企業に委ねるのも大問題。
※来年春頃の訴訟提起に向けて、山田洋次監督をはじめ、文化人など25名の呼び
かけ人で原告1000名を目標にサポーターも含めて募集している。(森本註)

△質疑応答
Q 共産党との共闘は考えているのか?
A 超党派で協力体制を整えたい。国会議員への働きかけも強めたい。
Q 裁判費用は?
A 印紙代が原告1000名で約460万円(一人の場合は13000円)、コピー代約50万
円、弁護団原告団活動費約300万円の見積もり。
Q 早川町のトンネル工事を差し止める裁判の有効性は?
A 民事訴訟による差し止めは、人命に関わるほどのよほどのことが無い限り認
められていない。また、今の弁護団の力量では、行政事件訴訟で手一杯の状態。
これから各地で差し止めを求める民事訴訟が幾つも出てくると思うが、この行政
事件訴訟を核に連携してもらいたい。拙速な提訴は散発で終わってしまう可能性
が高い。
Q 建設予定地区の対応は?
A 地区の意思表示を明確に示すべき。個々地区の対応とともに、大局的にリニ
ア自体の問題を取り上げることも必要。
Q リニアの電磁波の問題は?
A 必要な情報が公開されていない。裁判上で情報の公開を求めていく。
Q すでにある実験線のアセスはやったのか?
A やっていない。やるほどの規模ではないと言うことらしい。
Q 実験線が営業線になるとはいっていなかった点をもって、訴訟の対象とする
ことはできるのか?
A 単独で訴えを提起することは困難。今回の行政事件訴訟の中で手続き違反と
して取り上げることは可能。このことは、充分な手続きを経ず、試掘されている
トンネルがそのまま本線に組み込まれようとしているのと同じ。JR東海の騙し
のテクニックの一つ。
Q 経済的に見合わないリニアをなぜやろうとするのか?
A JR東海は新幹線も含め全体として利益が出せると言っているが、その真偽
は定かではない。この経済性の弱点を委員会や国会で追及すべき。また、株主代
表訴訟も視野に入れていくべき。
□出席者からのコメント
★地方創生の内容は、公共工事を優先し社会保障を削ること。
★リニアが完成したら、リニアへ客を振り向けるため、在来線の特急・急行の本
数は減らされ不便になる。
★もともと山梨に新幹線を通す計画はなかった。金丸がリニア実験線を山梨に
持ってきて既成事実を作り、山梨にリニア新幹線を敷く布石を打った。
リニア新幹線は経済的に成功しない。また南アルプス破砕帯での難工事が事業
を頓挫させかねない。
以上
2015.11.17